アタッツカーズビジネススクールの「大前研一のアントレプレナー育成講座」を読んだ。2003年9月発行だ。で、読んだ感想が、上記のタイトル通り。
大前研一は、この本の序章と終章に寄稿(というより、しゃべったことを誰かが録音して文字に落とした)している。大前研一は、早稲田大学理工学部を出た後、東工大、MITを経てマッキンゼーで活躍したスーパーコンサルタントであることは周知の通りだ。だから、頭がとっても良いことは確かだし、面白い発言をしたりしていて、興味深い人物であることも確かだ。
彼が言うには、「起業には構想力が必要だ」とのことだ。確かにその通りである。
しかし、シティバンクの社員が携帯を通帳にしようとした構想力を、コンビニのATMと比較して、如何に優れているかをほめている例では思わず失笑してしまった。

「たかだか2万5000店しかないものが、どうしてネットワークの拠点となれるのか。ITのネットワークに勝てるわけがない。コンビニはあくまでも炉端の弁当屋でしかない」と。実際、私が言ったとおりコンビニのATMはダメになっている。

ものすごい自信である。コンビニのATMのどこがダメになっているんだろうか?イトーヨーカドー銀行はきっちりと黒字を出すビジネスを行なっている。そのモデルの中心にあるものが、コンビニのATMだと思うのだが・・・。ビジネスとは利益を出すことによっ初めて成立するものだと思うだが・・・。
確かに電子マネーが中心となる世界では、携帯電話が通帳となりうる可能性はある。現に大垣共立銀行が、携帯電話をATMカード(通帳ではない)として使おうとしている記事もある。

カード使わず携帯電話でATM利用 大垣共立銀行
大垣共立銀行は9日、キャッシュカードの代わりに携帯電話で現金自動預け払い機(ATM)を利用できる新サービスを4月に始めると発表した。全国初の試み。
 新サービスはNTTコミュニケーションズ、沖電気工業と共同開発した。一部の携帯電話にある赤外線通信機能を利用。ATMの受信部分に携帯電話から金額などのデータを送信、さらにATM画面で暗証番号を入力して利用する。同行に利用を申し込み、携帯電話にサービスのための情報を取り込む必要がある。利用できる機種はNTTドコモの「505i・iS」、第三世代携帯電話「FOMA(フォーマ)」など。

銀行のカードや通帳を携帯電話でという発想は、今やっと実現に向けて走りだしただけである。大前研一に携帯を銀行通帳にというインプリメンテーションを是非お願いしてみたい。
「構想力」だけではビジネスは出来ない。「MECEとは」をキーにこのサイトに訪れる人がいるが、MECEを使って構想力や分析力が必要とされるような場面は、ビジネスの全体のうちでごくわずかである。後は、実行力がモノをいう。きっちりとビジネスを行なって能力がずっと重要なのである。
経営コンサルタントはプランを立てる事や結果を分析することには秀でているが、実行力は大いに疑問である。事実、この大前研一はが行なっているエブリデイドットコムなるものが、世の中でどれほど注目を浴びているのだろうか?どこの主婦がこのサイトの存在を知っているのだろうか?携帯の数とコンビニのATMの数が、コンビニATMが失敗する理由だとするのであれば、コンビニとエブリデイドットコムの存在を知っている人の数を比較して欲しい。オポチュニティだけでは、ビジネスが成りたたないことは一番本人が知っていると思うのだが・・・。
さて、この大前研一は、本の中でこんなことも言っている。

私がこの前中国の大連へ行って、ある会社を訪問したときのことだ。瞬間的に、「これは間接業務のユニクロ化が起こる」と感じた。どういうことかというと、アメリカがアイルランドやインドに間接業務をもっていったように、日本も中国で間接業務ができるのではないかとひらめいたのだ。

ひらめくのは簡単だ。で、大前研一自身出来るのか?本によると10数ページの事業プランを書いたらしい。どこまで出来るか楽しみである(これを実行する会社があるらしいが、バカバカしいので会社名はあげない)。

  1. ブロガー(志望) says:

    お邪魔します。
     かつて大前研一は「石原都知事は議会と衝突して、早々
    に知事の地位を投げ出す。」と言っていました。