昨日公開されたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画の最新作シッコを観てきました。ところどころ新鮮で面白い問題提起もあるなぁと感じたりもしましたが、前評判とは異なり、いまいちキレがない気もしました。アメリカに住んでアメリカの医療保険に多少触れた経験があった自分でこれなので、もしかしたら日本人にはあまり実感がわかないテーマなのかもとも思ってしまいました。もしくは、自分がアメリカで、医師として求められる能力だけでなく、倫理観、正義感、コミュニケーション能力、ネットワークに優れた医師をファミリードクター(最初に見つけるまでが苦難だったのは事実)として持つことが出来たことや、保険としては恵まれてるプランに加入出来たこと、大きな病を犯さなかったという運もあったからなのかもしれませんが・・・。
ただ、日本の医療について改めて考えなければならない良い機会となりました。
日本は、どちらかというアメリカ型に近づいている感じでしょうか。確かに、いかにも自業自得的な病を持ち、なおかつ自分さえ良ければという「せこい」人が病院を掛け持ちするなどといったことにより、医療費の高騰を招いており、それが結果的に国民皆保険などの医療制度の根本を揺るがしはじめていることも事実です。また、最近では、聖路加病院のように、誰もが診察を自由に受けることが出来なくなってきた病院もあります。
だからといって、人の命をお金で判断する倫理観はどうかと思うし、そこに国防の名のもとに大量の税金投入している国が国民一人一人の命のために何もセーフティネットを用意していないというのは、民主主義のバランスが崩れている気もしています。フランスのように「政府が人民を恐れている」のではなく、その反対のトレンドが醸成されているのもその危うさを日本で感じる一端でもありますが。
また、イギリスの医師の給与が、タバコをやめさせること、コレステロール値を下げることなど、いわゆるアーリーヘルスというか予防医学(つまり医療の目的そのもの)をもとに評価され決められる一方で、病気を完全に治すと商売あがったりだと考える日本の医者の「せこさ」により取り分が変わってくる医療制度の設計思想もそろそろ文明社会にあわせる時期に来ている気もしますが。
自分自身は、全ての医療は信頼に足りうる公的機関によって原則提供されるべきものだと思ってます。
参考:マイケル・ムーアvs.グーグル?