本屋でチラッと立ち読みして、自分とほぼ同じような考え方をする人がいるもんだなぁと思っていたものの、内容はハードカバーにする程でもないので購入まで至っていなかった部下を定時に帰す仕事術を、毎晩時計の針が12時を回るまで仕事をしている息子を不憫に思ったのか、父親が食べ物と一緒に宅急便の中に入れて送ってくれました。

まずは、この本の著者の佐々木氏が、部下に送ったメールが痛快なのでそのまま引用します。

残業・休出問題について
弊社の一部の社員の時間外労働時間は、月40〜70時間を数える。シンクタンクの仕事は長時間労働になりがちであること、また残業の効用は十分認めるとしても、以下を読んで仕事に対するスタンスを改めて欲しい。
1.労働基準法36条に規定されているいわゆる36協定で、残業は月45時間を越えてはならない。それを超えるにはそれ相応の理由と手続きがいる。再建会社でもない現在の当社にはそれほどの長時間労働をしなくてはならない事情はない。労働に対する世の基準(法の遵守)に逆らう常識の欠如を感じる。
2.仕事はコストと成果のバランスが常に求められる。生じる成果に比べ多くのコストを投入する採算意識、バランス感覚の欠如を感じる。
3.会社はプロの社員を求めているが、プロとは限られた時間の中で、いかに効率良く成果を出すかである。そのために事前の周到に考え抜かれた作業プログラムと最短コースで仕事を完遂させる能力が、日々試されている。成り行きにまかせ、ただやみくもに時間をかけるのはプロのやることではない。
4.多くの残業を続ける結果、自分の健康を損ねたり、大切な家族とのコミュニケーション不足というマイナスが生じるリスクを考えないことに想像力の欠如を感じる。
5.また、仕事以外の活動が、その人の人格形成に役立ち、幅広い仕事に繋がるはずなのに、そのことに目を向けない向上心の欠落もみられる。
6.自分で時間外の時間を記入し、上司に申請するということは、自らの所定の時間内では仕事ができないということを毎月表明していることであり、そこに羞恥心の欠如をみる。
7.そのような部下を目の前にしながら、注意もせず、仕事の指導もせず、相談も乗らない管理職に、責任意識の希薄さを感じる。また、同じ会社の中で、同じグループの中で、残業の多い人と、ほとんどいない人が存在するの仕事の配分が間違っており、マネジメント不足である。

自分の2月の時間外労働時間は、120時間程度(ちなみに、マクドナルドの店長の残業代未払い裁判の店長さんの残業代は月90時間前後)。例えば、この120時間含めた実質の労働時間の280時間が、自分にとっても会社にとっても、社会にとっても密な時間だったら何も問題じゃないけど、ほとんどの時間はIdle。
日付が変わってからドキュメントレビューをするのが当たり前で、その後の修正作業も当たり前。これに追い討ちをかけるように、「なんで、○○さん(eurohopeのこと)は、早く帰るんですかね?」みたいな発言をする自分たちが普通と考え、それが普通ではないことに気が付かないというのは、正直イタイ・・・。
コンサル会社にいてこれほどまで頭を使わなくていいとは思わなかったし、もしくは本来使う必要がない(ごまかしやまやかし)ところで無駄な時間を消費するとは思わなかった。客も、高い金を払って時間しか手に入れられないのであれば、コンサルである必要はまったくないのに。
どこかで、ITも手がける某国産メーカーの生産性(一人辺りの売上高)や社員一人が生み出す付加価値(一人辺りの時価総額)がGoogleに比較して数十倍も劣るというレポートを読んだコトあるけど、これを@実働時間で計算したら百倍は軽く超えるとはず。
最初に少しだけ頭を使って、無駄を省いて最短コースで仕事しようという意識を持たない限り、時間を無駄にするだけではなく、うっかりミスなどが増えて品質が落ちる。クオリティの低下、更なる管理、残業増、現場が疲弊、モチベーション低下という悪循環は、見ていて痛々しい。


シンプルな制約理論のようにボトルネックの継続的な改善を重ねていく、個々のタスクのセルを少し細かくしてまわす、当たり前だけど、各自のロール&責任をはっきりさせ、アウトプットイメージを作り上げた上で、最短コースを目指す。これが出来なければ、いつまでたっても改善する訳がない。管理手法をかざす頭でっかちのプロマネを小馬鹿にしたくなる理由は、まさにここにあるのだが、今の自分の立場的にでは最大限「手抜き」をして、体調を崩さないようにするのが精々のが辛い・・・。
この本で書かれてることで気になった点がいくつかあったけど、ひとつは「多読家に仕事が出来る人はいない」という言葉。これは、さすがにこの結論はまずいと思った。本を読んで知識だけ身につけて、使えないという頭でっかちは問題だが、仕事以外の知的活動の一貫として本を読まない限り、人としての深みや広さは生まれない。前の会社の外資系コンサルを渡り歩いてきた上司が「人のスキルや知識はこれまでのプロジェクト経験の規模で図れる」と言ったときに、思わず「あんまり杓子定規に考えないほうが良いですよ」と皮肉を言ってしまったが、実践だけしているとこの手の杓子定規な上司を多数算出する弊害も生まれる。多読家になる必要はないが、「本はたくさん読んだ方がいい」は正しいはず。
追記:そんなブログを記載した日の帰宅時間は午前2:20。

  1. money says:

    僕の経験では、「現場に降りてこないコンサルに、仕事ができる人はいない」なんだけど。。。笑;

  2. kio says:

    悪循環を好循環に変えるために現場に乗り込むことはあるかと。これを上手くやらないで現場におりすぎると、そこで時間をとられすぎてプロジェクト全体の進行のボトルネックになることもあるからね。んでもって、現場が甘えはじめるとそれは自分の首をしめるという悪循環になるしね。