茂木健一郎氏インタビュー
IT社会が急速に発展する中、ネットワーク上を飛び交うテキスト、音声、映像などデジタル情報の流通量は今や人間がマネジメントできる量を超えてしまっています。そのため、現在、人間の能力と情報処理のスピードが多少不整合を起してしまっているところがあることは確かです。
最近、私がよく言うのは、1972年にローマのシンクタンクであるローマ・クラブが発表した『成長の限界―ローマ・クラブ人類の危機レポート』と同じようなことが、現在、脳で起こっているということです。当時考えられていた“経済成長というものは無限に続く”というシナリオは、“人類の経済活動の基礎となる天然資源を提供し、経済活動の過程で出る廃棄物を受け入れる「自然」というもののキャパシティが無限であること”を前提にしていたものであったのに対し、ローマ・クラブのレポートは“地球の自然には限界があり、それを超えては成長できない”というものでした。
 それと同じことが、今のIT社会でも起きているということです。つまり、このIT社会は、最終的には、“脳”に流通するデジタル情報を消費してもらわなければいけない産業構造になっており、しかも、“脳の情報容量は無限である”という前提に立っているのです。そのため、人間の脳の可処分時間を奪い合うといった状況に陥っています。
 しかしながら、実際には脳が受け取り、消化できる情報には限界があります。そこをどう乗り越えるかが、IT産業の成長のシナリオを考えるときに非常に重要なポイントとなってくるのです。

第三次産業革命を解くかなり思慮深い発言。『IT社会で求められる経営者の能力とは』という副題がつまらないので読むのをやめようと思ったけど、久々に読んで良かったと思ったインタビュー記事でした。